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『日本の景気は賃金が決める』を読みました

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)

アベノミクスの金融緩和政策や公共事業拡大は前提として、その方向性(お金の使い道)を変えることで、日本の不況を改善しよう。という提案。

賃金格差に注目し、それをいかに解消していけばいいのかが模索されている。

金融緩和政策によってデフレが発生してしまうならば、海外の資源バブルではなく、国内の不動産バブルに誘導する。不動産価格の上昇と、公共事業の都市部への集中で、サービス業に従事する人の賃金を上げ、それによって、賃金デフレを脱出する、というシナリオのようだ。

公平性の問題はとりあえず横に置いておき、経済学の観点のみから論じられている。

人口の集中が、サービス業の売り上げに影響を与えるのは確かにそうだろうと思う。人の数が少ない地域では、サービス業をやっていくのはなかなか難しい。ただ、不動産バブルがそのまま派遣やアルバイトの非正規雇用の賃金上昇につながっていくというのは、素直に頷けなかった。

人口が増えて、サービス業がたくさん出現すれば、人手が足りなくなり、時給が上がる。しかし、人口が増えているのだから、働き手も多くなっている。需要と供給どちらが勝つのだろうか。

サービス業が売り上げを作れるのは、たとえば食事を作るのが面倒な人、クリーニングに時間を使えない人がたくさんいるからだろう。人がたくさんいても、全員が暇していて、自炊しているのならば、外食業はなりたたない。(もちろん、小売業は成り立つが、生み出している付加価値の大きさは小さいだろう)

もちろんサービス業に従事している人が、他のサービス業を利用することは多々ある。ただ、それ以外の産業に従事して、忙しく働いて(しかも給料をたくさんもらっている人)の数がそこそこないと、サービス業は成長していかないのではないだろうか。

もしかしたら、まったく的外れな理解なのかもしれないが。

あと、都市部に人口を集中させることについては、仮に大きな地震が発生したらどうなるか、という点が気になった。